入試現国の制覇 第0回「現代文ってそもそもなんスか?」

入試現国の制覇 第0回

 

Q そもそも現代文ってなんスか?

A 入試における現代文とは「現代思想を水でうすめて簡単にした文章」だYO!

Q 現代思想ってなんスか?

A 「近代」を内側から食い破ろうとする西欧人による言語の営みだYO!

Q 近代ってなんスか? なんでそんなもん食い破らなくちゃいけないの?

A なぜ近代を克服しなければいけないとエライ人たちが考えているのか、について先に答えさせていただきたい。

 

それは彼らの信じるとこによれば、現代社会における諸問題たちとは実際には現代になってはじめて地球上に現れた新生物であるのではなしに、

むしろ、

現代より一つ前の世界である近代からすでに社会の中に存在していたガン細胞のような問題たちであって、その旧世界のガン細胞たちが解決されずにそのまま生き残り、現代において悪化してガオーッと花開いたものたちであるから、だよ。

つまり現代社会の抱える病理とはその根をたどれば近代の病理にたどりつくのだ、とエライ人たちは考えているから、だよ。

 

Q たとえばどんな問題?

A たとえば、

「人生にも宇宙にも意味がないと世界中の若者たちが気づいてしまっていて、だけど科学やおカネを究めてもそこには虚しさしか存在しなくて、その結果として新興宗教にハマる人々が世界的に増えていること」とか。

たとえば、

「先進国と途上国のあいだに構造的な格差が存在しており、途上国の人はイヌかブタみたいな人生を押し付けられがちであるのだけれど、しかし先進国の人たちは既得権益を守るためにこの格差を解消する気がないこと」とか。

たとえば、

「グローバリゼーションは各国の中産階級を没落させて急速に勝ち組と負け組とのあいだに極端な格差を作ってしまったし、その結果としてホモサピエンスの社会においては1%の人間がぜんたいの富の95%を独占しているという狂った状況が生まれているのだけど、

しかし、なぜか、先進国においては人々は諸悪の根源である特権階級を攻撃せずに、むしろ人種差別や外国人へのヘイトスピーチという見当はずれな行動にいそしんでおり、さらには生活保護受給者などの弱者を攻撃してよろこんでいること」など、など。

 

Q なんでそれが近代のせいなの? 近代ってなに?

A 近代とは何か、ついに入試現代文の本丸だね。いえい。

 

高校における歴史の授業の感覚ならば「近代」とは時代の区分のことを言う、だいたい16世紀前半くらいから1900年の後半くらいまで。

イベントとしてはアメリカ発見、なにはなくとも産業革命、市民革命がおこり国民国家という虚構の世界観の完成をむかえ、植民地でもって白人が有色人種を支配する、産業革命の頃に資本主義が発生、勃興、そして隆盛をむかえて、ついに市場の暴走にいたる。

資本主義と国民国家と植民地主義の三位一体が行きつくところまで行きつくや、どかーん、二度の世界大戦(=ヨーロッパの内戦)でもって近代文明の失敗が明らかになる、あたりだね、

すなわち高校の歴史の授業の感覚においては「世界の主役が西欧であったほんの300年くらい」のことを指して我々は近代と呼ぶんだよ。

しかし入試現代文で「近代」といったらそれは時代区分のことではない。文明の名前をいう。

 

近代文明とは何か?

それは現代社会のスタンダードになっているシステムや価値観のことであって、具体的には以下のものを言う。

 

個人主義:
「倫理的なよさ」の最終的な根拠が個人の自由の尊重にある、と人々が素朴に信仰している状態。たとえば、
Q「どうしてキミは自由に職業を選んでいいと思っているの?」
A「なぜって自分の人生なのだから自分で決めて良いじゃん」
Q「なぜ自分の人生だと自分で決めて良いの? その根拠は?」

 

科学技術の競争:
戦争と産業とにおいて他国に優越するためにどこの国も科学技術の振興に力を入れる。

 

民主主義:
民主主義が最もすぐれた政治システムだとインテリたちが信仰している世界。
この宗派の信者たちは他の政治システムを邪教として認めない。
個人主義と表裏一体。

 

資本主義:
自由競争と市場経済こそが唯一の経済の在りかただ、と、だんだんと世界中の人々が洗脳され始めている。

 

ここまでが前提。

この辺をつかんでおかないと入試現代文を読んだときに「ふーん、で、何が書いてあったの? 日本語?」という状態になるYO!

次回以降に思想史を追いかける形で現代文の解説をするYO!

 

以下、予定。

全ての基本。高校生は必ず以下の四つの概念を理解したい

ニーチェ:神の死

ソシュール:言語論的回転

フロイト:無意識の発見

マルクス:資本主義批判

もっとも重要なのはマルクスの資本主義批判だよ。

 

派生形の議論

↓ ↓

神の死    →「大きな物語の崩壊」「若者論」

言語論的転回 →「構造主義」「脱構築」「本質主義と構築主義」「ジェンダー」

無意識の発見 →「アイデンティティ」「オリエンタリズム」「ナショナリズム」

資本主義批判 →「グローバリゼーション」「テロリズム」「ポスコロ」「持続可能な開発」

そのた   →「生命科学と倫理」「こころのハードプロブレム」「人工知能」「日本文化論」

第0回はここまでだよ。どっとはらい。

 

文責 ふじい

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