都立受験と私立受験のちがい
偏差値表をながめると似たようなニッチを占めているように見える都立高校と私立高校。
なんだか偏差値が似た感じだし、だいたい似たような勉強で合格できるのだろうか? 学生からよく質問をうけるのでまとめました。
Q
早慶みたいな私立と、都立の自校作成の受験と、具体的にはどう違うわけ?
A
まず都立自校作成。
都立においては鉄則があって「学習指導要領を逸脱した範囲は出ない」。
そして私立。
私立においては「指導要領をわりと無視してくる」。
Q
どゆこと?
A
都立は教科書の知識を逸脱することができない。だから問題制作者が問題を作るときにどうしても「中学生にとって正統的に難しい感じがする」問題に落ち着かざるをえないんだ。
Q
正統的に難しい感じ? なにそれ?
A
たとえは「トリッキーすぎて解法が思いつかないよ」とか「知識が細かすぎるよ重箱の隅かよウルトラクイズかよ」とか、そんな印象の問題が生まれづらい。都立の自校作成は「ふつうにストレートの速球が来た」という感じがする。
Q
「ストレートの速球」って? うまくイメージつかないんだけど?
A
まず英語。長文がひたすら長い。
おそらく三年生の教科書の半分以上の分量がある。テストが50分だとすると、リスニングで10分かかるとして、見直しで5分かかると仮定すると、残りの35分、この時間で超長文を読み切る。読むスピードが速くないと死ぬうえに日常的に長文を読む訓練をしておかないと試験の途中で脳みそが疲れる。
つぎに国語。国語もひたすら長い。点数を取るための小手先の訓練を塾で積む必要があるというよりは、むしろ、ふだんから本を読む習慣をつけておかないと間に合わない。大学受験までにらんで読むべき本は一覧をわたすよ。
最後に数学、数学は「関数とグラフ」「平面図形」「立体図形」という中学生のきらいな分野から直球ど真ん中で素直に難度の高い問題が出る。
Q
理科と社会は?
A
理科と社会は都立の共通問題と一緒だよ。
Q
ほかに特徴はないの?
A
「内申点の比重が高い」という特徴がある。内申についてはつぎに説明するよ。
Q
つまり都立は「素直に難しい」「とにかく文章が長い」ってことね。
A
うん。
Q
早慶付属は?
A
早慶付属の受験は都立とまったく異なるゲームなんだよ。どっちが難しいとかいう話でなくて、「ゲームが違う」んだ。
偏差値のランキング表で似たような場所にいるからと言って、「どうせなら受けとかないと損だな」という雑なノリで安易に手をだすことは勧めない。
もし早慶というゲームに参加するならば、キミは「異なるふたつのゲームに手を出したら負担が増える」という事実ををきちんと理解して、そのうえで参加するか否かを早く決めたほうがいいよ。「偏差値が上がったら考えよう、夏が終わってからでも間に合うでしょ?」というのは止めた方がいい。やるなら最初からやると決めておきな。
Q
どう違うんだよ
A
まず早慶の受験は「内申点がいらない」。これが最も大きい。
都立が第一志望の学生は内申の対策に時間が取られる。
定期テストの二週間前から対策にかかりっきりになると仮定すると、中間と期末がそれぞれ一学期と二学期にあるのだから計八週間、つまり二か月分は内申のために潰れる計算になるね。
Q
内申は時間がとられるね。
A
しかし早慶は内申を必要としないので、内申点にかかずらわっている時間は端的に「無駄な時間」になる。これが精神的なストレスとして圧し掛かってくる。
つぎに早慶は「英、国、数の三科しか使わない」。
都立との併願生は理科と社会がまるまるムダになる。これもストレスになる。早慶が第一志望なら内申も捨てて、理科と社会も捨てて、さっさと三科にだけ注力したほうがいいね。
最後に早慶は「学習指導要領を逸脱した問題を出す」。
内申も問わないし、理科と社会も必要ないけど、そのかわり、英語と数学が「特殊なスポーツ」になる。
Q
特殊なスポーツ?
A
数学は絶対に教科書にのっていない公式や、高校範囲の公式、そして「典型的なテクニカル問題」を200問くらいは暗記しないと話にならない。
Q
ぐは
A
英語においても高校範囲の文法、大量の単語(高校は二の単語)と大量の熟語(850個くらい)、そしてテキスト一冊分くらいの語法問題の丸暗記が必要になる。
Q
おーけー。わかったよ。
「内申のための勉強」「理科・社会の勉強」がいらない代わりに、「数学と英語がそれ専用の勉強になる」わけね。たしかに都立自校作成という受験ゲームとは、ちょっと毛色が違うね。
A
時間の使い方がバッティングするね。
Q
どっちが良いとか悪いとかではなくて、「ちがうゲーム」なわけね。
A
そう。偏差値のランク表はいちど頭からのけておきなよ。
学生は必ず「併願校」で迷うことになる。そのときに偏差値表がキミらのプライドを無駄に刺激するんだ。偏差値が似ていても私立と都立とを並べて考えるのはちょっと止めておきなよ。
Q
真に大事なことは「どちらか一つのゲームに全力を投入するのか」、または「ふたつの異なるゲームに同時に参加するのか」、自分でさっさと決めると、ってことだね。
A
そうだね。
べつにどっちでも構いやしないけど、まわりに流されないで自分で決めなよ。
文責 藤井
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