部活は盛んなほうがよいの?
※ 部活とのつきあいかたについて、高校生からよく受ける質問
Q
文武両道で部活の盛んな学校のほうが良いよね?
A
偏差値60くらいの都立高校がよく文武両道を掲げるよね。たしかに「イメージは良いと思う」。
Q
私立の有名な中高一貫校っておれの勝手なイメージだとずっとガリガリ勉強してる「東大マシーン」ってイメージなんだよね。偏差値少年院かよって感じ。
A
そういう偏見で他人を貶めるのはよくないんじゃない? 話してみれば面白い奴もたくさんいるよ。
Q
そうなんだ。
A
だけどキミの言いたいこともわかるよ。
Q
でしょ。
A
たしかに私立の有名進学校の学校生活においては、我々が思っている以上に「東大を頂点とした偏差値の序列」という一元的な価値観が生活を支配しているみたいに見えるんだよ。
Q
でしょ?
A
有名進学校においてはほぼ毎日なにをしていても、学生は頭の片隅に「偏差値」がチラついていて、たとえ勉強をサボってはっちゃけて遊んでいるように振舞っている時ですら、彼らはかなり強迫的に偏差値に支配されてるように見える。
Q
そういう偏差値に支配された窮屈な生活よりさ、部活も全力でやって、青春して、そんで進学でも結果を出して、そんな高校生活の方がバランスよくてカッコよくない?
A
イメージとしてはあたかも理想の高校生活ででもあるかのように聞こえるね
Q
あたかも? 聞こえる?
A
だけど偏差値の高い都立高校がよく謳う「文武両道」という文句についてはその内実をよく観察したほうが良いと思うよ。
Q
どゆこと?
A
「ひとつの学校のなかにガリガリ勉強して東大に行くA君という学生もいるし、かつ同時に、スポーツで全国大会に行くような運動部のBさんという学生もいます、うちの高校は両方の種類の学生を取りそろえているんですよ、品ぞろえが豊富でしょ? ほら、文武両道なんですよ(どやぁ)!」とういう高校教員やOBたちの自慢はさ、じつは、「一人の同じA君という学生が部活で全国にも行けるし、かつ同時に、A君が受験でも結果を出せる」ということではないんだよ。A君はスポーツでは全国に行けないし、Bさんは勉強してないんだから偏差値が低いんだ。ここが「文武両道の都立高校」のカラクリなんだよ。
Q
だって文武両道でしょ? 部活でも活躍するし大学進学も安心なんじゃないの?
A
多くの学生においては答えは「ノー」だ。
Q
だって近所のタカちゃんのお姉ちゃんは部活でチアリーディングしながら、全国に行って、それで夏から本気を出して早稲田に受かったって言ってたよ?
A
それが可能なのはごく限られた先天的に超人的な高校生だけだ。そこはキミが生まれる前、父ちゃんと母ちゃんの精子と卵子が結合したその瞬間のときの、遺伝子の配合のバランスに文句を言ってくれ。
Q
え?
A
全国大会に進出するほどに高校生活を部活に捧げたのならば、とうぜん、普通なら彼だか彼女だかの勉強はおざなりになるよ。当たり前じゃん。
Q
ふぁっ!?
A
そして私が観察している限りでも部活に青春をささげた高校生はみな受験を犠牲にしていたよ。とくに偏差値の高い都立高校の場合によくあるね、高校に入学したときに持っていた彼ら彼女らのポテンシャルに比べれば、偏差値の低いの大学に進学する学生がすさまじく多いよ。
Q
え?
A
これも当然だけど、大学進学で結果を出した学生は勉強に時間を割いてたよ。
Q
へいへいへい、ちょっと待ってよ。
A
「文武両道」ってのは学校全体として見たときにはたしかに当てはまるかもしれないけれど、学生一人一人を見てみてみれば、「部活に高校生活をささげた学生の大学の偏差値は下がる」、「大学受験を意識している学生は勉強に時間を割いてる」という当たり前のことしか起こってないよ。
Q
ぐはぁっ!
A
どちらが青春として正しい寿命の使い方なのか私は知らない。
しかし重大な点は以下の点であって、「時間は有限なのだから部活に青春を捧げたら当然、大学の偏差値は下がる」という当たり前の事実を、キミら高校生が本当に最初から了解していたのか、という点なんだよ。
Q
どういうこと?
A
おおくの都立高校生はここの現実認識が甘いんだ。高1の4月の時点で学校の先生も保護者も「うちは文武両道だから」とか言ってる。それで学生のほうも、自分は部活も学業もどちらも両立できるスーパーマンにちがいない、と、どこかで空想してしまうんだ。
Q
やめろ! 言葉で僕の胸をえぐるな!
A
なし崩し的に部活中心の生活に巻き込まれ、数学と理科の復習はずるずるとおざなりになる、公式はまったく頭に入っていない、気づくと英語すらずるずる下がり始める、だけど心のどこかで思っているんだ、「自分は勉強をサボっているだけだ、自分が本気になりさえすれば、勉強なんてすぐに巻き返せる、だって中学までは優等生だったんだから」って。そしていざ受験になったときにはじめて、かつて自分が自分に期待していたほどには、短期間では自分の偏差値が上がらないという宇宙の現実に直面し、ぶーぶーと不満を口にする。これが典型的な都立生だ。
Q
ぐばばば!
A
人生において優先するべきは部活なのか、勉強なのか、どちらなのかについては、高校入学前の3月や4月の時点で父ちゃんや母ちゃんと家族会議をしておいた方がいいと思うよ。なし崩し的に部活中心生活に巻き込まれるとあとで後悔するよ。
多くの高校生のライフスタイルこうだ。
↓
「なんとなく運動部に所属していないとスクールカーストが下がってダサい感じになってしまう、
だから運動部に所属しておく、
すると週に五日か六日くらいは部活があって、七時すぎに家に帰ってくる生活になってしまう、
夕飯を食べて風呂に入ってユーチューブを見る、するともう九時を過ぎている、SNSをやってマンガを読むと12時なる、
勉強する時間はない、
土日も部活だ、
一年生の二学期の頃には数学と物理はまったく公式が頭に入っていないことが常態化する、
いつか取り返せるだろうよ、とタカをくくっていたが、あれれ、いつのまにか高2の夏になっている、もうこの頃には理数系は取り返しがつかなくなっている、なにげに英語も黄色信号から赤信号になりそうだ、
家でノートと教科書を一秒も開かなくなったのはいつからだろう、
部活と勉強とが時間を奪い合う関係になっていると気づいた時には、もうやりなおすには遅かった」
こんなライフスタイル。都立高校生あるあるだろ。
Q
まだ平気だ。僕はそこまで酷くない。
A
本人が主体的に勉強を切り捨ててまで部活を選んだのなら良いんだよ、絶対に甲子園に行きたい、とかね。
しかし最も危険なのはキミが「中学の時は成績が良かったし自分は部活も勉強も両立できる側の人間だ」とふわりと自信を持っている場合だよ。
Q
やめろ。ちょこちょこ僕の人格をディスるのをやめろ! じゃあどうすればいいんだよ! 部活をやらずにガリ勉しろっていうのかよ!
A
ちがうよ。部活はやりなよ。
Q
え? やっていいの…?
A
大切な点はただひとつ。「復習をしないと公式は忘れてしまう」という当たり前の事実を、高校生活が始まる前に深く胸に刻んでおくことだよ。中学と高校では知識量がちがうんだ。中学の数学の知識量を10とすると、高校の数学は100だ。復習しないと死ぬぞ。
Q
どうすればいいんだよ…、どうすれば…。
A
「数学を復習する時間を強制的に作る」んだよ。日々の暮らしの中に数学の復習の時間をビルドインするんだ。日曜は一週間分を復習する、とか、火曜と金曜は数学を復習する、とか、決めておくんだ。
Q
そんな面倒くさいよ
A
面倒くさいならやらなくてもいいけど。「時間を割かなければ偏差値は下がる」、「時間を割けば知識は定着する」、という現実だけ、高校生活が始まる前にキミが知っていれば、それでいいよ。
文責 ふじい
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