国語では、いきなり文章を読んで、答えを選択肢から選び、さあここで解き方のテクニック!などということはやりません。
まず初めにやることは、基本的に「外国語を学ぶときのやり方」と同じです。
外国語を学ぶときには、「語彙」「文構造の理解(文法)」「短文の多量のインプットとアウトプット」から始まります。
私たちは日本語ネイティブとして聞き取りや発音はできるので、まず語彙習得と文の分解を練習します。
文の分解練習は特に重要です。「主語・述語」「修飾関係」「指示語の内容」の理解をひとつひとつドリルでクリアしていきましょう。
語彙と文法をクリアしたら、いよいよ文章を読んでいきますが、やはり最初は「設問を解くことはおまけ」です。
まず文の展開をまとめる練習、次に要約練習を行います。
要約とは、「文章を通して筆者が言いたいことを捕まえる」作業です。設問ではなく、本文に集中します。
「物語文には物語文の、説明文には説明文の典型的な展開の仕方」があります。
入試においてこうした典型的な流れを読み取りやすいのは、「入試現代文では出題者側がこれを問いたいという典型的な意図が存在するから」です。
それを学習したうえで「文章をチェックで汚していく練習」を徹底して行います。
そうして本文を読みきれたなら、設問で聞かれる箇所に自ずとチェックが入っているものです。
文にチェックをいれてまとめ・要約練習をする文章は、本格的な受験勉強期に入れば、受験で頻出の文章に取り組むことになります。
すると結果として背景知識となる「テーマごとの典型的な言説」が身に付きます。
そうしたテーマの背景知識こそが速読のスピードを上げてくれます。
ただ徒に文字を素早く追っていても「文章理解のスピード」は一向にあがりません。
言葉の意味や修飾関係、テーマの背景知識を理解せずに文字を素早くみるだけでは、おそらく目を速く動かせる人間になるだけです。
アニメーション監督の宮崎駿に動画を速く描くコツを聞いたところ、※「鉛筆を動かす時速の差」「早く描こうとする意志の問題」と言われて困ったという逸話があるのですが、やはり天才の言うことは違うなと思わざるを得ません。
きっと質問の意図は、「良い動きを描くための絵と絵のつなぎ方、ポイントはなんでしょうか」というものだったはずです。
しかし宮崎さんにとっては「そんなものは勝手に描けるだろ、手を速く動かせ」というわけです。
これを良きアドバイスと感じるのであればおそらく天才ですから、語彙や文法、話の典型的な展開の仕方を学ぶ前に目を速く動かしてみるといいと思います。
本文をしっかり整理できるようになれば、最後に設問の解き方に注意して問題演習です。
こうした「設問読み取りの注意点」は、実際に過去問を解き始める時期からで十分です。
※『作画汗まみれ 増補版』大塚康生 p42