高校生よくある質問「大学の学部ってなに?」

大学の学部ってなに?

 

Q

なんか学部ってありすぎてよくわかんないんだよね。大学で勉強したことが将来にどう役に立つのかもイメージつかないし。

A

たしかに。「将来どう役に立つの?」ってのは高校生によく聞かれる。

 

 

Q

ちょっとざっくりと説明してよ

A

そもそも大学の学部は大きく四つに分かれるんだよ。

 

 

Q

四つね。

A

自然科学系、社会科学系、人文科学系、そして最後に職業訓練系。

 

 

Q

自然科学系、社会科学系、人文科学系、それから職業訓練系ね。いいよ。

A

職業訓練ってのはまさに就職に直結してる。だいたい国家資格を取るのが最終目標になってるようなカリキュラムの学部がそうだよ。

 

 

Q

国家資格。

A

たとえば医、歯、薬、獣、それから看護。

最近だと理学療法や作業療法みたいなリハビリを手伝う職業も大学に学部があるね。

それから小学校や中学校に教員を輩出すための教員養成系の学部。つまり医、歯、薬、看護と教員養成。これらの国家資格をとるための職業訓練系は保護者からすさまじく人気がある。母ちゃんを喜ばせたいなら進んどけ。

 

 

Q

イメージついた。18歳で受験勉強を始める段階ですでに将来の職業が決まっているようなタイプのやつか。

A

そうね。次が自然科学系。これはキミらが理系って呼んでる。

 

 

Q

自然科学系ね。なにすんの?

A

自然科学は大きく分けると「理学」と「工学」に分かれる。

 

 

Q

理学と工学ね。

A

まず理学。理学は数学を研究したり宇宙物理の理論でブラックホールを計算したり、それから天文学で星を眺めたり、動物の進化を議論したりする。一言でいうと「ガチで学問やっちゃう、就職で役に立たない知識」。本当に勉強が好きな奇妙な人たちが集まる。

 

 

Q

就職できないの?

A

出来ないということはない。ただ勉強してる内容が産業(=カネ)に結び付きづらいことに加えて、そもそもこんな学部に集まってくる奴ら自身が就職にあまり興味のない学生がおおい。学部は理学でもいいけど、しかし院まで理学を専攻するとマジでヤバイ。

 

 

Q

ああ。

A

彼らはだいたい「受験勉強は偏差値ゲームのパズルで嫌いだったけど、大学の勉強は楽しい」みたいなことを言う。放っておくと「研究者になりたい」なんて言い出すし、理学の研究で院に進学しても企業に就職するにはあまり得じゃない。だけど数学で院に進学した人についてなら、リスク計算で金融に行ったり、流通の最適化なんかでシンクタンクに行ったり、IT系のコンサルに行ったりするイメージはある。

 

 

Q

工学系は?

A

工学系に進学するとキミの母ちゃんはすごくよろこぶ。なぜなら就職に強いから。

 

 

Q

なにしてるの?

A

産業のために科学技術を応用する分野だよ。エンジン作ったり、ロボット作ったり、新しい化学繊維を作ったり、カーボンナノチューブを開発したり、肥料の改良をしたり、プログラムでシステムを開発したり、つまりは産業(=カネ)に直結してる。

 

 

Q

理学か工学か迷うんだけど。

A

真理のために科学をやりたいなら理学であって、人間のために科学をやりたいなら工学だ、と昔は言っていた。

 

 

Q

昔は? いまは違うの?

A

うん。今は理学と工学の境界線はどんどん曖昧になっている。理学と工学に限らないのだけれど、100年以上もまえに定めた学問の境界線では「いま、この瞬間の世界の問題」をうまく扱えないんだよ。たとえば酸性雨を考えてみてよ。あー俺は酸性雨という現象に正面からぶつかって、この問題系の核心をゴツリとつかみ出してきたいなー、って考えたとき、そのアプローチって無機化学なの? 気象学なの? 産業社会学なの? それとも国際政治なの? ほら、従来の学問ディシプリンだとうまく対処できないんだよ。

 

 

Q

むむ?

A

理学と工学の関係に戻るとね、むかしは「理学の方が工学よりも高級だ」っていう暗黙の了解があったんだよ。だけど今だとロボットや人工知能のおかげで工学の側から理学のほうを引っ張たりする刺激もある。もう二つの分野を分けても意味ねーだろってことで「理工学部」という名前も増えているよね。

 

 

Q

結局どっちに行けばいいの?

A

率直に言うと「どっちでもいい」。学部生の勉強する内容なんてそんなに大差はないんだよ。理系で真に進路を決めるのは院なので、大学に入ってから理論をいじくったり実験を繰り返したりして自分の「性質」を見極めなよ。学部はあまり深く考えないで偏差値と相談しとけばいいよ。ただし院は深く悩んでおけよ。

 

 

Q

なにその雑なアドバイス。

A

工学の場合は間違いなく院に進学することになるから、偏差値が同じくらいの大学で迷ったら「世界ランキングが高くて科研費の多いほう」の大学を選んでおきな。

 

 

Q

なんとなく受験の数学が得意なだけだし、実際は科学とかあんまり興味ないからさ。進路を決められないんだけど。就職に強いとか、給料が高いとか、どれ?

A

昔からずっと鉄鋼と自動車が日本産業の背骨だったんだ、だから「工学部の電気電子」に皆が行きたがったものだった。しかし今は「情報系の学部」に学生が凄い勢いで流れてるよ。ロボットやAIなんかの影響だと思う。情報系は偏差値もガンガン上がってるし就職もひっぱりだこだよ。

 

 

情報。

人材屋さんをやってる友達なんかに近況を尋ねるとみんな口をそろえて「プログラムと数学の両方をできる人材は足りてない、労働市場では高値で取引されている、新卒でもべらぼうな高値がつく」って言う。特にやりたいこともなくて数学が不得意じゃないなら情報に行きなよ。

 

 

Q

おーけー。まとめると、職業訓練系は母ちゃんがよろこぶ、理系の工学系は就職が強い、そして理系の理学に進む場合は就職をマジメに考えておくこと。そんな感じ?

A

そうね。もちろん理学でも就職できるよ。理学という学問がわるいのでなくて、高3の段階で理学に進みたがるような学生のメンタリティがね、おうおうにして就活と相性が悪い傾向にあるんだよ。本人の性格の問題ね。

 

 

文系は?

文系は「社会科学系」と「人文科学系」におおきく分かれる。

 

 

社会科学と人文科学。

理系に例えると、就職に関してなら、社会科学の方が工学系に似た感じにあたる、そして人文科学の方が雰囲気が理学に近くなる。

 

 

ふーん。ふたつはどう違うの?

社会科学系とは法学だとか政治学だとか経済学だとか。つまりカネと権力について勉強してるのが社会科学。18歳の段階で就職を強く意識している学生はだいたい社会科学系を受験する。

 

 

Q

なんで?

A

昔から「東大の法学部から国家官僚」というコースがあるんだよ。そのイメージで就職での学歴フィルターを気にする高校生は東大でなくても法学部をとりあえず選ぶことがある。

 

 

へー。

だけど最近は法学部は人気がないみたい。経済学部に偏差値で抜かされるところも多い。そして学部の人気は就職に引きずられる、あとで話すけど今の流行は「国際○○」「教養○○」みたいな名前の学部だよ。すごい偏差値になる。

 

 

Q

経済は就職に強いの? なんか「ビジネス」って感じがする。

A

経済学それ自体はビジネスから遠いよ。根津駅から海王星まで歩いて行くくらい遠い。経済学を学んでもその知識はほぼ100%サラリーマン生活に関係ない。そんな知識よりお辞儀するときの腰の角度とか、名刺を渡すときには相手の名刺より下から出すとか、それから上司に言われる前にビールを注ぐタイミングとか、そっちのほうがサラリーマンには役に立つよ。

 

Q

え?

A

だけど18才の段階で就活にたいして「やるぞ」って意識の高い学生が経済学や経営学の学部にあつまりがちなんだ。だから学問の知識はほぼなんの役にも立たないけれど、しかし卒業のころには経済学部はふわっと就職に強いような雰囲気になる。

 

 

なんで就職にたいして意識の高い学生が経済に集まりがちなの?

経済学部については「偏差値のたかい大学の経済学部を出ておくと銀行などの金融業界に強い」というイメージがある。銀行や証券みたいな金融業界は給料がめちゃくちゃ良いだろ? 合コンでもモテる。親戚で集まったときもマウントとれるな。だから金融や、それから最近だと経営コンサルに行きたいような学生は経済学部を受験する。

 

 

おお。外資系コンサルとか響きからしてカッコいい。

実際には経済学部じゃないと銀行に入社できないなんてことはない。そういう志向を持った学生が経済学部に集まりやすい、くらいのイメージね。

 

 

なるほどね。法学=官僚に進む。経済=金融に進む。国際関係・政治学=マスコミになりたい、みたいな「イメージ」があるわけね。

そう。イメージ。でもそのイメージで人が集まるから、自己予言的に未来が現実化する。

 

Q

人文系は?

A

人文系は哲学、思想、文学、宗教、歴史、地理、そのあたりがコアになる。それから場合によっては心理学が無理矢理に所属させられている場合があるし、教育学系もここにぶっこまれている場合があるし、さらにはなぜか社会学が強引にねじ込まれている場合もある、そして言語もここに入る。ごった煮だね。

 

Q

哲学、思想、文学、はヤバいね。サラリーマンになる気なさそう。

A

ぶっちゃけて言うと日本の大学の人文系とは「法学と経済学でない文科」っていう雑な括りに近い。だいたい総合大学の中でも建物がボロいのは人文系だ。学生の雰囲気が理学部の学生と似ていて、偏差値競争をバカにしてずっと本ばっかり読んでいたような理屈っぽいやつがおおいイメージ。

 

ああ。想像つくよ。

就職について雑に考えてるやつが集まりがちなので大学に入った後は自分だけでも就活のアンテナを高く張っておかないと危ない。

 

イメージとして「17歳のときに経済学部を受験したがるような高校生は、大学生になるとリア充になりがちで、そして就活を始めたときも意識高い系になりがち」であって、

 

反対に、

「17才のときに人文系を受験したがるような高校生は、大学生になると非リアかサブカル系になりがちであって、そして就活を始めたときも意識低い系になりがち」であるので、

 

自分の性格をきちんと理解して就活をがんばれよ、って感じだろうか。これは理学と工学の学生にも当てはまるね。学問の問題ではなくて、学生自身の性格の問題ね。

 

 

よく「文学部は就職が死んでる」って聞くけど、本当なの?

学部のせいで就活がうまくいったりダメだったりすることはないよ。学部は関係ない。あくまで自分の就活に対する積極性がすべて。就活にやる気ない奴が集まりがちなんだよ。

 

人文系に進みたがるようなメンタルの高校生は就活を強く意識しておかないとマジでフリーターかニートになりかねないから、大学生になったら紙に「就活」と書いて壁に貼っておきなよ。

 

いいか、今や就活は大学三年からじゃ遅いからな。就活ルールは廃止されたし、企業は「インターンは就職活動ではありません」とか大嘘こきながらインターンに来た大学二年生を青田刈りしてる。ユニクロなんて露骨に大学一年生を社員として採用してる。慶応や一橋の学生のところにはOBやOGがリクルーターとしてやって来るけど、しかしキミのところには自分から動かないと誰も助けに来ないからな。大学一年の秋くらいから情報収集を開始しておけよ。

 

 

Q

「国際○○」だとか「教養○○」だとかの話を聞いてないんだけど。

A

うん。最近すごい人気だよね。「国際○○」とか「教養○○」とかが学生に人気な理由は、端的に就活で結果を出してるからだよ。

 

 

Q

なんで企業から評価されるの?

A

「英語の勉強が多いから」。留学を義務にしたり授業をすべて英語でやったりするよね。

 

 

Q

なんかカッコいいじゃん。

A

うん。世の中のオジサンたちもそう思うみたい。

「国際○○」とか「教養○○」とかって学部は授業の内容自体は実際にはまったく難しくないんだよ。ヘタすると高校の勉強より簡単だったりする。だけど授業を英語でやる、すると企業のおじさんたちが「うむ、遊んでないでちゃんと勉強してたんだね」って評価する。

 

 

Q

なんで? ほかの学部の学生だって勉強してるかもしれないじゃん?

A

うん。世の中のおじさんたちはこう考えているんだよ、「俺たちが学生の頃は勉強なんてしないでバイトと麻雀と合コンとセックスしかしてなかった、だから今どきの学生だって全員が遊んでいるに決まってる、だって俺は勉強なんてしてなかったんだから」

 

Q

ん?

A

「若者は勉強なんてするはずない、そんな中で英語を強制的にやらされてるなんて、まぁまぁ偉いほうじゃん?」って、オジサンたちはそう考える。だから「国際○○」はオジサンたちから評価されて、それで就活の時に企業からモテる。

 

Q

ちょっとひっかかけるけど、まぁいいや。なんで英語ができるといいの?

A

いろいろな企業においてビジネスのパートナーが海外の企業になってきているからだよ。

 

Q

グローバリゼーションってやつだね。全球化。

A

そう。中学の社会科では「日本の経済は加工貿易です」だとか習うけど、しかし実際には日本の経済はもともと内需が85%くらいの内需経済だったんだよ。そもそも内需の強い産業構造でないと自国の景気が外国の景気に依存してしまうんだから、堅実な成長なんて出来るはずないじゃないか。で、最近は少子化の影響でもって内需の伸びも頭打ちだねってことで、みんな中国の市場や東南アジアの市場に目が向いてる。日本人を相手に日本語だけで商売をするわけにいかなくなってきているんだ。外国の人と商売するときに使う言語は英語だね。

 

Q

だいたいわかったよ。まとめていい?

A

うん。ありがとう。

 

 

Q

就職だけを考えるなら「職業訓練系」に進んで国家資格を取るのがいい。

大学で学んだことがそのまま職業に直結するし、なにより母ちゃんが喜ぶ。

 

つぎに工学系。まず就職は安泰。なかでも情報系が時代の寵児で就職のときに自分に高い値段がつく。

 

文系ならば学部は重要でないので本人の就活に対するモチベーションが大事。文系学生はリクルートの創り出した「就活ビジネス」の荒波にど真ん中から飲み込まれることになる。

どうしても就活が気になるならば英語を勉強してきたとアピールできると良い。って感じ?

A

うん。そんな感じだね。ありがとう。

 

 

Q

ぐむむ。迷うなあ。大学も迷う。

A

それぞれの分野ごとに強い大学が違うんだよ。出自とか歴史とかあるからさ。

 

 

Q

どうなってるの?

A

僕らが住んでいるのは東京だから首都圏の大学に限定するけど

 

自然科学系なら、

東大 → 東工大 → 筑波、千葉、横国、

 

キラリと光る一点特化したスペシャリストの理工系なら

海洋大、電気通信大、農工大、 この大学群はめちゃくちゃ就職が強いね

 

社会科学系 (法学、経済)なら

東大 → 一橋 → 横国

 

人文系 (文学、心理、教育)なら

東大 → 筑波

 

エリアスタディなら

東京外大

 

って感じだよ。

 

Q

やはり就職が正義だよね。数学は得意だし経済学部にしようかな。

A

ぼくの個人的な意見を言わせてもらうと就職のことはあまり考えないで自分の興味ある分野に進んだ方がいいと思うよ。そんで自分の興味ある勉強にすべての時間をぶっこむのがいいと思う。だってサラリーマンになったらもう二度と学問に触れることなど無いからね。宇宙物理だとか哲学だとか、ぜったいに楽しいじゃん。

 

Q

なんかキレイごとじゃない? だってそんなことしたら、じゃあ就活はどうするの?

A

……。それでも興味ある分野に進んだほうがいいと思うな。

 

 

じゃあ就活は?

……。うぐぐ。

 

文責 ふじい

 

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