中学受験について知りたい! QandA

中学受験について知りたい! QandA

はじめに

中学受験をするか迷っている方がこちらをご覧になっているかと思います。

よくわかります。迷いますよね。

 

 

中学受験は他人に意見を聞いてまわっても「客観的な意見を得にくい話題」です。

なぜなら皆が意識的にか無意識的にかポジショントークをするからです。

たとえば、われわれ塾屋は商売なので中学受験をセールスしがちです。

すでに中学受験に参加しているママ友にお話を伺うと、「私立中学はすばらしい。それに比べて公立はちょっと…」のような意見を言いがちです。

一方で中学受験をしないと決めているママ友に受験について相談すると、「なんか子どもがかわいそうだ」と受験を非難しがちです。

悩ましいですね。こんなときに大事なものは客観的な情報です。

以下でデータを交えて具体的な質問にお応え致します。

 

 

Q.中学受験はするのが当たり前?

A.文京区は国・私立中学に進学する小学生の比率が全国1位です。実は特殊な環境であると認識ください。

以下の表は東京都教育委員会が公表している、『平成30年度公立学校統計調査報告書【公立学校卒業者(平成29年度)の進路状況調査編】』を基に、23区における国・私立中学校への進学者比率を算出したものです。

〇出典:平成30年度公立学校統計調査報告書【公立学校卒業者(平成29年度)の進路状況調査編】 第1表状況別卒業者 (東京都教育委員会)
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/administration/statistics_and_research/career_report/report2017.html
 

 

平成29年において「国・私立に進学をした文京区の小学生は40%ほど」も存在します。

これは進学者の比率なので、受験者でいえばさらに多くなります。

ところがこれが全国では8%程度まで比率が下がり、東京に限っても18%程度です。

よって「文京区の小学生の中学受験率の高さはかなり特殊」と言えます。

受験勉強をしても第一志望のほかは興味がないといって公立中学に進学する学生もいますし、または小6の夏ころに受験を諦める学生もいます。

しかし小4や小5の段階では、クラスの半分以上が受験のために塾に通っているような体感を受けるはずです。

これで中学受験について迷うなというほうが無理があります。

大事な点は「日本全国から見れば中学受験はまだまだ少数派だし、東京に限定しても少数派だ」という点です。

文京区だけを見ていると「うちだけ乗り遅れてしまうと錯覚」してしまいますが、しかし文京区は特殊です。

「まわりがやっているから」という理由で中学受験を意識したのならば、「全国から見ればべつにまわりはやっていない」のですから、あまり心配しなくて大丈夫です。

 

Q.文京区の特殊性ってどんなところ?

A.文京区は「第7位」、これは平成29年度における全国市区町村の平均所得の順位です。また国立付属や伝統ある私立、公立の中高一貫校に通いやすい環境にあります。

以下が平成29年度(2017年)おける全国の市区町村の平均所得ランキングの一部です。全国の市区町村は1741あります。7位というのは上位0.5%です。

〇出典:全国市区町村所得(年収)ランキング
https://www.nenshuu.net/prefecture/shotoku/in_shotoku_city.php
※2017年総務省発表の資料より全国1741市区町村の所得を算出したもの

 

平均とは一人暮らしの学生や年金暮らしの高齢者、またはまだ年収の上がりきっていない20代や30代の労働者などもすべて含めた平均です。

よって人生でもっとも年収の高くなる40代や50代のサラリーマン男性の年収は平均よりもずっと高くなります。

そして小学生・中学生の親とはそうした年齢にあたるでしょう。

ここで先ほどの平成29年度の国・私立中学への進学者データから、進学者数が多い順に東京23区を振り返ります。

1位は文京区、2位は千代田区、3位は中央区、4位は港区、5位は目黒区。

さきほどの全国市区町村の年収ランキングは文京区が7位、中央区は5位、目黒区8位は、千代田区は2位、港区は1位でした。

年収と中学受験比率の順位はおどろくほど似ていますね。

文京区が港区や千代田区を抜いて受験比率において1位である理由はおそらく文京区からは伝統ある名門の中学校に通いやすいためだと思われます。

開成、筑波大付属、お茶の水女子大学付属、学芸大附属竹早、都立小石川、など、など。さらには中学ではありませんが東京大学も文京区です。

ここにおいて予想される命題は「中学受験は財力に余裕のある裕福層が採用する、中学受験の出費なんてさして打撃ではないという人々のライフスタイルだ」ということです。

昔から住んでいる方は特に意識されないと思いますが、文京区はそのように全国的に見ても特殊な環境下にあります。

 

Q.中学受験にかかる費用はどれくらい?

A.4年生から大手受験塾に通った場合、塾費用のみで最低200万。

受験情報サイト、インターエデュによる、「はじめての中学受験 Vol.2 中学受験の費用っていくらくらい?」では、小4から大手受験塾に通った場合、「塾費用のみで3年間200万は必要」とされています。

塾費用は高学年になるにつれて上昇していき、6年生の1年間は100万円は必要となります。

これは「塾費用のみ」ですから、別途自主的に購入する参考書であったり過去問であったり、塾への移動含めもろもろの諸経費は入っていません。

ちなみにこれは2012年のデータですので、間違ってもここから安くはならず、諸経費の物価の問題を考えても、4年次から大手受験塾に通った場合の中学受験費用は、総額では200万円からさらに上乗せされることは間違いありません。

〇出典:「はじめての中学受験 Vol.2 中学受験の費用っていくらくらい?」(インターエデュ)
https://www.inter-edu.com/article/exam/exam_02/

 

Q.中高一貫校に通えばその後の教育費は安くすむ?

A.データから見ると間違いだとわかります。実際には中高一貫校に通う学生の方がふつうの公立校に通う学生よりも通塾率は高いのです。

「私立の中高一貫校は学校によるフォローが手厚いので塾いらず、だから入学さえしてしまえば私立はおカネがかからない」というお話を聞いたことはありませんか。

これは本当でしょうか。

結論から言うと「間違い」です。

文部科学省による『平成28年度子供の学習費調査』から抜粋したグラフを見てみましょう。

〇出典:結果の概要-平成28年度子供の学習費調査 平成28年度子供の学習費調査の公表について(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/1399308.htm
 
 
上記の資料からわかる通り「私立に通う学生の方が総じて補助学習費が高い」です。
 
公立の方が高くなるのは公立中3の受験生に限ります。
 
よって「私立に入学しさえすればそのあとは教育費がかからない、というのは誤り」だと分かります。
 
※用語解説
 
・補助学習費:
学校で使用するものと共用のもの以外で、学校教育の学習に支出した経費。
独自の参考書・問題集代、家庭教師・学習塾へ支出のことで、授業料など学校内でかかる支出は含まれません。

 

・その他の学校外活動費:
スポーツ・芸術・地域活動など、学校教育に関する学習以外の習い事一般に要した経費。

 

Q.公立の中学は荒れている、という神話は本当?

A.荒れてません

(文京区について)

 

Q.中学受験はどんな学生にメリットがあるの?

A.平均よりも明らかに学力が高い学生にとっては計り知れないメリットがあります。

あまりに賢い学生は公立の中学だと授業が退屈すぎるのです。

この問題は古くはフランスなどで発見された問題であり、「IQの高い学生のなかには学校が退屈で勉強を嫌いになってしまい、社会的に落ちこぼれてしまうものがまま存在する」という問題です。

アメリカなどでは飛び級というシステムを作って彼・彼女らが退屈に陥る状況を回避しようとしています。

賢すぎるというのはある種の「障害」です。平均から離れすぎてしまっているため平均的な学生が集まる集団の中だと浮いてしまい、「ここは自分の場所じゃないと感じる」のです。

そのような学生にとっては中学受験はメリットがあります。

 

Q.中学受験の問題はどれほど難しいの?

A.学校によって問題のレベルが大きく異なります。早熟な天才用の問題、高校都立入試レベルの問題、小学校範囲とさほど変わらない問題と様々です。

偏差値帯に応じて明らかに問題の質が変化します。

この比較から分かることは、問題のレベルに限って言えば、「中学受験とひとくくりにできない」ということです。

大学受験や高校受験のような「共通入試問題がない」ため、ほとんどの学生にとって目安となる問題群がありません。

ゆえに、「目指すべき学校に応じたレベルの問題群に適切に取り組む必要」があります。

 

Q.中学受験への適性はどうやって判断すればよい?

A.精神的にはまず学生本人がやる意思を示していることが第一です。
学力的には指標になりうるものが2つあります。

「友達が塾に行ってるから」のようなことではなく、「よりレベルの高い勉強をしたい」、または「行きたい学校がある」と学生自身が意思表示をするならば、メンタル面では適性があります。

おそらく勉強を通してある種の競争的な環境に身を置くことに抵抗がないと思われます。

逆にもしそうでなければ、本来必須ではない受験勉強など学生にとっては精神的苦痛以外のなにものでもありません。

学力的な主な指標は、以下の2つです。

1.4年生以降でも国・算・理・社の4科目で「すべて大変良い(3段階で一番上)」を取り続けている。

2.4年生以降の四谷大塚「全国統一小学生テストで偏差値60以上」を取り続けている。

小学校の内申は「そもそも学校の授業を聞くことで理解できているのか」を示す重要な指標です。

ここに全く問題がないならば、上記の都立入試レベルの中学受験問題もクリアできるはずです。

「全国統一小学生テスト」は、四谷大塚が6月と11月の年に2回、全国の小学生向けに「無料」で開催している全国テストです。

中学受験問題とは関係なく、小学校範囲から問題のレベルをあげることでテストが作られています。

このテストは追跡調査において、「小5段階で偏差値60を超えた学生の7割が大学受験時にも偏差値60を超える」という結果が出ています。

〇出典:子どもの学力 10年追跡調査 知的好奇心育み学力アップ(毎日新聞2017年10月20日)

子どもの学力 10年追跡調査 知的好奇心育み学力アップ(毎日新聞2017年10月20日)

 

高校生は思春期で行動範囲も広がり、「素直にお勉強なんてやってらんない」となりがちな時期です。

そんな時期でも小5の偏差値と高い相関性があるということは、「小学校高学年の全国統一小学生テスト結果には、むき出しの能力が現れている」ということです。

よって上記の指標を越えている学生たちには現在小学校の授業は退屈で、区立中学に入っても同様に退屈するかもしれません。

普段の学習にどこか退屈そうにしていたら、強制ではなく「こういうのもあるよ」と紹介してあげるのも良いと思います。

 

Q.まだ迷っています。最後になにか意見を!

A.試しに始めてみて、途中でやめてはいけないというルールはありません。やってみて合わないと思ったらやめればよいのではないでしょうか。

ここまでデータで見てきましたが、中学受験にかかる費用は高額です。

始めてみたらいつの間にか大変な金額を費やしており、「今後も費やす金額に見合わない、やめたいとも思うけど今更退けない」という精神状態に追い込まれていきます。

しかし実際は、途中でやめても良いどころか、合わないと思ったならやめた方が経済的にも心理的も合理的です。

経済学には「サンクコスト(埋没費用)」という考え方があります。

これは「すでに支払ってしまっていて、その後行動を変えても、得にも損にも変わらない費用」のことを言います。

ときどきダム建設などで問題になりますね。「すでに何千億円もかけているのに今更やめていいものか」という意見がでます。

しかし、「すでにかけ終わった費用自体は今後何をしようと戻ってはこない」のです。

それは無視しなければいけないのであって、考えるべきなのは、「今後かける費用に、今後リターンがあるかどうか」です。

学生が中学受験に適応しなかった場合、「これまでがもったいないからと続けても、未来は損が増えていくだけ」になります。

実は本心ではだれも心から望んでないままやっているというつらい未来です。

これまでが勿体ないとそう考えるお気持ちは大変よくわかります。しかしそれを脇に置いて考えることが重要です。

その都度において、今後続けることにメリットがあればやる、今後続けてもメリットがないならやめる、それでよいと思います。

 

個人的な判断材料

最後に内申書ではなく、わたし個人の判断材料を挙げて終わりとします。

学生の適性を試す一つの方法としては、「まず小4の間に教科書レベル小6までの算数をすべて学習してみること」です。

これを週2程度の授業ペースで家庭で反復学習しながら半年で終わらせることができて、かつ忘れずに覚えていられる」ようならば、そのとき、その学生はあまりに難しい問題はまた別として、基本的な中学受験の問題群をこなしていけると思います。

一般に中学受験は4年生から始めないと間に合わないと信仰されていますが、そんなこともありません。適性があれば5年からでも十分に間に合います。

 

もっと知りたい方へ

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ハイエンドの受験エリートたちを中心に回る中学受験界のしくみをルポした本

 

〇「おおたとしまさ氏の全3回のWebインタビュー」はこちら

第1回:
おおたとしまさ氏に聞く、中学受験で陥りやすい「最悪な親子関係」…笑顔で12歳の春を迎えたい親子へ
第2回:

おおたとしまさ氏に聞く、中学受験「塾」との付き合い方…やめませんか?親の受験テク競争
第3回:

おおたとしまさ氏に聞く、中学受験「志望校選び」のコツ…併願校は偏差値表を活用

 

〇ブログ:「中学受験をわらう」はこちら 

中学受験にむいていない家庭が中学受験をするとどうなるのか、匿名の塾講師が塾経営の内部を暴露していくブログ。

 

 

文責 町田 藤井

 

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